当記事のリンクには広告が含まれています
理系学生のメジャーな進路といえば研究職ですが、インターネット上では研究職はきつい、つらい、やめとけといったネガティブな意見が多いため、自分の進路が不安になった人も多いでしょう。
ですが、研究職はどこで働くか、どんな研究をするかで働き方や待遇が大きく変わります。的外れな意見で研究職を諦めてしまうのはすごくもったいない…
私は新卒で化学メーカーへ就職してから企業研究者として10年以上のキャリアがあり、基礎研究から製品開発まで一通り従事してきました。酸いも甘いも経験してきた私自身の経験から、企業研究者という進路は自信を持ってオススメできます。
そこでこの記事では、
- 企業研究職をオススメする4つの理由
- 研究職はやめとけと言われる7つの理由
- 企業研究職に向いている人4選
について、化学メーカーの研究者としての立場で回答します。
この記事を読めば、研究職を選ぶべきなのかの指針がわかります。私が10年以上培ってきた研究職としての知見を詰め込んでいるので、研究職に行きたいけど不安がある人は最後まで読んでください。
企業研究職をオススメする4つの理由
私がなぜ企業研究職をオススメするのか、理由について述べていきます。
理由1・一般職に比べてプレイヤーが少ない
メーカー志望であれば、研究職は一般職に比べて就職倍率が低いことが一番のオススメポイントですね。その理由は以下の3つ。私が企業研究職を目指すようになった理由でもあります。
- 研究職は修士卒以上が応募条件になるので有資格者が限られる
- 研究開発を重視する企業なら研究職の新卒枠比率は高い
- 競合=全く同じ経歴を持った学生が少ない
それでも人気企業は競争が激しいですが、商社やコンサルのような激戦区に比べればはるかにマシです。
働ける確度を上げる選択肢を選ぶのも立派な就職戦略です
理由2・研究環境は大学よりホワイト
大学や企業によって差はあれど、研究環境は大学よりも企業の方がホワイトです。研究する時間も決まっているし、なにより使えるお金も段違いです。
大学で潤沢な研究資金を得るためには国のプロジェクトに当選するか、企業との積極的な共同研究が必要になってきます。そんな力のある研究室なんて一握りで、たいていの研究室はお金がありません。
私は学生時代にガラス細工を駆使して、キャピラリーの作成やガラス器具の修理をしていた日々を今でもよく覚えています。
会社の研究はいかに効率よく収益性の高い製品を開発できるかが大事なので、研究環境にしっかり投資してくれます。快適さが段違いです。
私はもう大学に戻って研究する気は起きないですね…
理由3・仕事の裁量が大きい
研究は個人で進める領域が多いため、仕事の裁量は大きい方です。
会社の仕事である以上、上司やチームメンバーとの協力や調整が必要なことももちろんありますが、仕事は個人単位で割り当てられるんですね。
仕事をうまくコントロールできれば実験計画やスケジュール管理を自分で決められるため、本当にのびのびと仕事ができます。
上司の信頼を勝ち取れば野放し状態ですw
理由4・就職後の選択肢はそれなりに多い
一度研究職に就いたら研究職しかできない、なんてことはありません。研究職で培った知識や経験、論理的思考力は様々な場面で役に立ちます。研究職からの選択肢をざっと挙げると以下の通り。
- 研究職から転職する時の主な選択肢
- ・コンサルタント
・技術営業
・品質管理
・技術マーケティング
もちろん研究職として他社へ転職する選択肢もあります。専門スキルが可視化しやすいぶん、マッチすれば強力な武器になります。
私はもう大学に戻って研究する気は起きないですね…
研究職はやめとけと言われる理由7つについて回答
つづいて研究職をやめとけと言われる理由について、企業研究職の立場から本当かどうかを回答します。よく混同されがちな大学研究職(いわゆるアカデミック)の意見についても触れていますので参考にしてください。
理由1・大学院の進学が必須なのは残念ながら事実
研究職を目指したいのなら、悪いことは言わないので大学院に進学しましょう。その理由はただひとつ、企業研究職は修士卒が事実上の標準学歴となっているからです。
確かに学部卒でも研究職に就ける会社はありますが、修士卒と比べて不利な点が多すぎます。
- 求人 :修士卒と比べて圧倒的に少ない
- 研究力:大学での研究期間が短いため地力がつきにくい
- 待遇 :修士卒よりも給与体系が低くなる
たしかに大学院まで通うのはお金も時間もかかりますが、あらゆる面から人生の選択肢を広げてくれますよ。
研究職を希望するのにあえて学部卒というハードモードを選ぶ理由はありません。
ちなみに大学で研究職を志すなら博士卒は絶対条件になるのでより厳しいです。
理由2・勤務時間が長いのは大学勤務の話
勤務時間が長いのは主に大学研究者の話です。担当教官がいいロールモデルなので見てみましょう。ちなみに私の当時の担当教官は毎日22時過ぎまでいるのが当たり前でした…
大学教員の業務は多岐にわたり、講義や研究の準備、採点、学生へのアドバイスや相談対応、さらには大学内の委員会活動や社会との連携など多岐にわたります。加えて自身の研究にかかわる実験や論文執筆など時間が溶ける仕事はいくらでもあるため、勤務時間なんてあってないような人が多いです。
一方、企業では勤務時間の上限が明確に決まっており、研究職だろうと他の職種と同じように規定時間内で仕事を終わらせる必要があります。
最近では労働基準監督署の指導も厳しく、かつての研究職に多かった
- 裁量労働制を適用して働かせ放題
- 残業代込みの賃金体系
のようなブラック勤務体系は減ってきています。
企業の研究職ならワークライフバランスのよい働き方は充分実現できますよ。
理由3・職場環境が閉鎖的な傾向はある
研究職は人の入れ替わりが少なく、外部へ積極的にコミュニケーションを取りに行く仕事でもないため、人間関係に大きな変化が起きにくいのは事実です。
どちらかといえば職場環境は閉鎖的なほうですが、だからといってコミュニケーションが不要なわけではない点には注意が必要です。
- 開発にチームメンバーの協力が必要なことが多い
- 製品を量産するためには製造部の協力が必須
- 情報収集・交渉・販売には営業部の協力が必要
コミュニケーションが苦手だから喋らなくてもよさそうな研究職に行こう、などと考えると足元をすくわれます。
理由4・研究テーマが変わりやすいのは事実
自分が好きな研究テーマをずっと続けたいという願いは正直叶いにくいです。
それなりの企業であれば複数の事業を持っているため、配属の時点で希望の部署に当たるかどうかは完全に運です。
さらに収益目的で研究をしている以上、研究テーマや開発体制が大きく変わることもしばしば。
- 研究に対する企業の戦略
- ・伸びている事業に人員を異動させる
・芽が出なさそうな基礎研究は中断する
・不採算の事業は縮小または撤退する
入社からずっと同じ製品を担当する人もいますが、数年に一回担当が変わる人の方が多いです。希望のテーマを研究し続けることを譲れない条件にするなら、大学に残る必要があります。
私は飽き性なので、研究テーマが変わる企業の方が性に合っています
理由5・研究職は結構つぶしが効く
なにかといわれがちが「研究職はつぶしが効かない」というセリフですが、そんなことはありません。
研究者として就職してから研究職以外を志望するパターンは結構あります。その時に研究開発の知識や経験が活かせる職種は意外に多いんですよ。
- 研究職の経歴が活かせる職種の例
- ・技術営業
・生産技術
・技術マーケティング
・品質管理
メーカーに勤務していれば、技術の知識や素養が武器にならないわけがありません。
化学メーカーから転職するときの選択肢は以下の記事で詳しくにまとめていますので、併せて参考にしてください。
>>化学系の転職は難しい?化学メーカーの転職事情を現役社員が解説
理由6・雇用が不安定は嘘。企業研究者は安定が売り。
研究職は雇用が不安定という意見が多いですが、これは大学研究者の特徴です。助教以上のポストの数が決まっているうえに、教授以外は任期あり雇用が基本だからです。
激しいポスト争いが原因で大学研究者の志望者数は年々減少しており、アカデミックを目指すのはずいぶんハードモードになってしまいました。
一方で、企業研究員は正社員雇用が基本のため、めったなことがない限り突然の解雇はありません。
さらに化学メーカーは新規参入者が入りにくい産業構造上、いったんホワイト企業に入りさえすれば安定した生活と研究環境が同時に手に入ります。
理由7・出会いが少ないのは研究職の宿命
理系大学に入った時点で薄々気づいているとは思いますが、どの分野を専攻しても男女比は圧倒的に男の方が多いです。そして研究室が仕事場になってもその事実は変わりません。
比較的女性が多いといわれる化学メーカーでも女性比率は多くて2割程度。
仕事関係だけでなく、趣味や友人関係など出会いの機会を拡げておきましょう。リフレッシュという意味でも大事です。
企業研究者に向いている人の特徴4選
私は数年間リクルーターをしていたんですが、企業研究者に向いている人が経験的にわかってきました。その視点から企業研究者に向いている人の特徴を4つ紹介します。
1.金になる研究がしたい人・研究に意味を見出したい人
高校時代になんとなく理系を選び大学で研究をしているものの、そこまで研究自体に強いモチベーションがない…という人は多いんじゃないでしょうか。だからこそ研究職を進路にしていいものかと迷ってしまう、と。
でも大丈夫です。企業の研究は金になるんです。稼ぐために研究するってすごいモチベーションになるんですよ。
私は大学の基礎研究を「こんな役に立つかどうかわからないことをやってて意味あるのかなぁ」と思いながら取り組んでいました。目的がはっきりしないと張り合いがなかったんですよね。
でも会社に入ってからは自分のやっていることがお金を稼ぐ源泉になるという事実を目の当たりにして、凄いことだと感じたのと同時にやる気が出てきたのを実感しています。
そこまで研究職に強い希望はないけど…という人にこそ、企業研究職はオススメです。
2.答えのわからない問題にチャレンジできる人
大学までの勉強とは異なり、ビジネスでの研究は模範解答がありません。
性能を上げるために試行錯誤をする必要がありますし、仕様やコストなどの制約によって性能が高い=よい製品という方程式が成り立たないこともあります。
いろんな条件や変化に対して自分で考えて行動できる人は企業研究者としての伸びしろが大きいです。
3.柔軟性がある人
研究者はこだわりの強い人が多いんですが、企業で研究をしようと思ったら柔軟性が必要です。
利益のために研究している関係上、会社では開発の方向性が変わることはザラにあります。そんな時、ひとつのやり方に固執せず柔軟に行動できる人は意外に少ないもの。
今の研究をしている目的はなにか、達成するためにはどうすればいいかをしっかりと考えられる人になれば強いですよ。
4.コミュニケーション能力がある人
研究職にはコミュニケーションが苦手な人が多いのは事実です。だからこそ、コミュニケーション能力があれば強力な武器になります。
部署内のチームワークはもちろんのこと、部署間ともうまく連携しなければいけません。連携先をざっと挙げると以下の通り。
- 研究職の仕事における連携部署先
- ・生産技術:開発品の量産
・製造 :製品の製造
・品質保証:製品の検査、品質調査
・営業 :顧客との折衝・情報収集・販売
・知財 :開発品の権利化
・その他 :研究開発業務のサポートなど
研究開発部門はだいたい製造か営業と衝突することが多いため、自分が間に入ってうまく収められるだけでもめちゃくちゃ重宝されます。どこまでいってもコミュ力は大事なんです。本当に。
企業研究職は研究と安定を両立できる職業
研究職について色々な視点から述べました。
研究職に対する漠然とした不安は減ったと思いますが、もしかしたら実際に研究職として働いている人の生の声を聞きたくなったかもしれません。
私しんたにのTwitterまで連絡いただければ可能な範囲でお答えしますが、もし気になる会社があるのならOB訪問で先輩に直接聞いてみるのが一番です。
最近はビズリーチキャンパスのような便利なサービスもあります。無料で利用できるので、就活を有利に進めましょう。