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インターネットで製造業と検索すると「製造業 やめとけ」という関連キーワードが表示されるぐらい、製造業に対するイメージが悪いようです。製造業に従事する身としては悲しい…
ですが、検索で出てきた記事をよく読んでみると情報が相当偏っており、自分が勤務する化学メーカーとはずいぶんと事情が異なるように感じました。
化学メーカーで働けば旨味が多いのに、事実とは異なるネガティブな記事を見てあきらめてしまうのはもったいない…
そこで本記事では、製造業はやめとけと言われる理由15点について、化学メーカー現役社員で現場勤務の経験もある私が見解を書きます。
製造業、特に現場系の仕事を探している方には参考になると思うのでぜひ最後まで読んでみてください。
本記事は化学メーカーの職種でも製造・生産系、特にプラントオペレーターを中心に書いています。
「製造業はやめとけ」が当てはまらない意見についての見解
まずは製造業へのネガティブな意見に対して反論します。化学メーカーは本当にいい業界なんですよ。
単調作業の繰り返しでやりがいがない
最も出てくる意見が、毎日同じことの繰り返しで飽きるというもの。製造業の中でも特にライン工の仕事を対象に書かれているようですが、化学メーカーでの仕事には全く当てはまりません。
化学メーカーの現場職であるプラントオペレーターの仕事内容は以下の通り。
- 各種製造設備の操作
- 原料の運搬・投入
- 制御室での反応監視
- 製造品の品質分析
- 製品の取り出し・梱包・搬出
- 日常的な設備のメンテナンス
実際には担当分けするため一人ですべてを行うわけではありませんが、最終的にはすべての役割ができるようになる必要があります。
製品によって挙動や取り扱いが異なるのは当たり前なうえ、新製品を作る機会もそれなりにあるため毎日同じことの繰り返しなんてことはまずありません。
覚えることが多いため大変にみえますが、そのぶんスキルアップの機会が得られます。総合的にプラスなことが多いですよ。
教育されない・教育制度が整っていない
大した教育もされず現場に放り出されて途方に暮れるという体験談から出たコメントだと思うんですが、化学メーカーで教育もせずに仕事をやらせるなんてことはまずありえません。
現場の仕事は危険がつきものですが、化学プラントの事故は製造業の中でも特に危険性が高いです。
なぜなら化学反応はいったん暴走してしまうと重大な事故につながるためです。
実際に事故を起こしてしまったときに企業が受けるダメージは大きく、かなり昔の話ですが某大手化学メーカーが爆発事故を起こしたときは半期の利益が8割ほど吹き飛びました。
だから化学メーカーでは教育に時間をかけることが当たり前という文化が根付いているんですね。
機械やAIに仕事が奪われる
機械やAIの発達で人の仕事が奪われるのではなく、人が担当する仕事の内容が変わるだけです。
確かに機械の発達によって手作業が減り、一人当たりの生産効率は飛躍的に向上しました。
ですが、機械が正常に動いているのか、また機械で作られたものが正常品かどうかを判断するのは人にしか判断できません。
同じく、AIは予測や判定を計算によって処理してくれますが、その処理が正しいかどうかを検証・判断やはり人なのです。
機械やAIの進歩に人も適応する必要があるのは、現場の仕事に限った話ではありませんね。
給料が低い
給料が低いという意見に関しては完全に間違いで、そもそも製造業は全職種の中でも給料が高い方です。
製造業は全職種の中で5番目の給与水準であり、全体平均より73万円も年収が高いことがわかります。
さらに化学メーカーに絞ると、東証プライム市場に属する企業の平均年収は735万円*と非常に高いです。
*該当する化学メーカー135社の有価証券報告書に記載の年収を平均
もし現職の待遇が悪くて別の製造業への転職を考えている方はぜひ化学メーカーを検討してみてください。
給料以外の待遇、具体的には各種手当や福利厚生、勤務時間等の待遇もよいホワイト企業が多いですよ。
>>参考:ホワイト企業に行きたいなら化学メーカーがオススメの理由を解説
給料が上がらない・昇給しない
定期的に給料が上がるかどうかは会社規模の影響が大きいものの、少なくとも大手化学メーカーで定期昇給がない会社はありません。日系メーカーでは年功序列の給与体系を採用しているためです。
年功序列はスキルの高い人材を獲得するのが難しい・仕事ができる人や若い人が割を食いやすいということで不評な制度ですが、30代を超えてくると旨味が強く出てくる制度でもあります。
ちなみに年功序列の今後ですが、化学メーカーでは完全になくならないと考えています。その理由は大きく2つ。
- 年功序列はそもそも製造業の雇用維持を目的に作られた制度だから
- 課単位で仕事をする製造は個人のスキルと成果が完全に紐づきにくい
実際に、化学メーカーの中で最も働き方改革が進んでいる三菱ケミカルでも基本的は職務記述書に基づいたジョブ型制度としながらも、プラントオペレーターは年功序列が残ったままです。
とはいえ、年功序列が縮小していく流れが進んでいくことは間違いないため、給料を上げるためにスキルを高めていく姿勢が大事になってきます。
製造業はイメージが悪い
製造業というか、工場勤務というだけでイメージが悪いだの底辺だのってよく言われるんですが…
もうね、製造業に従事する身としてこればかりは明確に否定しておきたいです。ものづくりは日本の社会を支える産業の一つであることは間違いないんですよ。
試しに持ち物や家にあるものを思い浮かべてみてください。
自動車、家電、衣服、携帯端末、家具、洗剤、おもちゃ、加工食品など…身の回りのありとあらゆるものは工場で作られているんですよ。
人間が豊かに暮らしていけるのは工場でものを作っている人がいるからです。だから現在工場で働いている人は、自分の仕事を卑下せずに誇りを持ってほしい。
そしてこれから工場で働くことを考えている人には、ものづくりは社会に貢献できるすばらしい仕事だということを声を大にして言いたいと思います。
どちらともいえない
化学メーカーに共通というより、会社や人によるという意見を集めました。
残業が多い
残業量は部署や会社によってまちまちですが、化学プラントの現場は他産業と比べて比較的残業が少ない方です。
なぜなら、生産効率を決める主要因は設備の規模と製品に要する反応時間の2つであり、人員の投入量が生産量に直結しないからです。
いくら人員を投入しても作れないものは作れないですし、現場の都合で反応時間を勝手に短くすることはできません。
どちらかといえば、決められた生産日程を滞りなく消化することの方が大事ですね。
昇進が難しい
製造部門の人が技術や営業より昇進が難しいという意見に対しては、半分正解といったところでしょうか。
昇進が難しいといえる理由としては、管理職ポストの数が違うためです。
通常、製造の管理職は基本的に部署単位で一人なのに対して、技術や営業は複数の管理職がいることがあります。
さらに、部署あたりの人数は製造の方が多いため、製造の方が管理職になれる確率が低いと言われる理由もわかります。
一方で、昇進が難しいとはいえない理由は管理職を目指す人の多さです。
製造は技術や営業よりも管理職になりたいという人の割合が低い傾向にあります。社内の意識調査での結果なのでデータをお見せできないのが残念ですが…
所属部門の違いで昇進スピードに差があるかどうかは会社次第のところが大きいため、気になる会社がどうなのかはOpenworkのような会社の口コミサイトで確認してみるといいでしょう。
コミュニケーションが希薄
製造現場は閉鎖的な空間だからコミュニケーションが活発にならないという意見ですが、これは会社というか現場次第でしょう。
人材の流動性に乏しく、部署外の人との交流が少ない部門や企業はいくらでもあります。
製造現場が、というより部署の風通しやトップの人のカラーの問題ですね。
なお、製造職は技術や営業と比べてコミュニケーションの頻度が少ない傾向にありますが、製造職に就けばコミュニケーションがいらないというのは間違いです。
製造の仕事はチームプレーです。そのためにはメンバー間の情報伝達が大事になってきます。
製造業自体に将来性がない
日本の技術力や競争力が落ちているというニュースを根拠に、日本の製造業で働いても未来がない!という意見があります。
化学メーカーは競争力のある分野に活路を見いだしており、将来性は充分にあります。
日本は資源に乏しいため、基礎化学品のような大量生産を前提とする分野では競争力が低いのが実情です。
おまけに生産能力が内需を超えている傾向にあり、集約が進んできています。
一方で、付加価値の高い機能性化学品については個々の市場規模は小さいものの、世界シェア60%以上の材料が70種類と高いシェアを占めています。
いわゆるグローバルニッチな分野では、日系メーカーは優位に立てているのです。
体力仕事が辛い
化学プラントは自動化が進んでいるところが多いので、プラントオペレーター=ガチガチの体力仕事ではありません。
体力仕事かどうかは何の仕事と比較するか、個人の体力や捉え方で評価が変わります。
そりゃあ事務仕事と比べると体力を使うのは事実ですが…それを言い出したら現場職を選ぶこと自体がおかしいですからね。
夜勤がつらい
24時間稼働している化学プラントでは交代勤務があります。勤務形態は様々ですが、3交代勤務が一般的です。
夜勤がつらいという意見は多くありますが、私が勤めてきた中で夜勤がつらくて会社を辞めるという人は見たことがありません。むしろ交代勤務を好む人の方が多い印象まであります。
交代勤務のメリット
・日勤と比べて給料が100万円以上高くなる
・定時上がりができる、残業は主に日勤が担当
・昼勤⇒夜勤など、休み間が長いタイミングがある
カレンダー通りに休みが取れないという不満もあれば、平日休みの方が人が少なくて快適という意見もあるため賛否の部分があるのは事実です。でも総合的にみてプラスの方が多いから皆やりたがるんですよね。
夜勤は身体がきついから長続きしないという意見もありますが、定年まで勤め上げる現場の人もたくさんいますよ。
当てはまる
ここまでネガティブな意見に対して反論する見解が多かったんですが、一部には当てはまる意見もあります。
ケガのリスクがある
製造業が嫌われる理由で大きいのが、きつい・汚い・危険のいわゆる3K職場が多いからですね。そのため、製造業とケガは切っても切り離せない関係にあります。
労災が起こる職種を見てみると、製造業が堂々の一位なんですね。
化学メーカーも製造業に含まれるため、例外ではありません。もちろん会社側も日々対策しているものの、一般の仕事よりもケガが多いという事実は認識しておく必要があります。
労働環境が悪い
労働環境の悪さは人材の定着率につながるため、化学メーカーでは職場環境の改善に積極的です。そのため、会社次第にはなりますが世間のイメージにあるような汚い現場はほとんどないのではないでしょうか。
ただし、化学メーカーならではの労働環境として注意しておかなければならない問題があります。それが現場の臭気です。
化学プラントはさまざまな薬品をトンスケールで使用するのが当たり前の職場である都合上、どうしても他産業よりも臭いがきつい現場があるのは事実です。
実際に化学品特有の臭気が身体に合わないという理由で、1ヶ月もたたずに会社を辞めた事例を数件知っています。
臭いに関しては個人差が非常に大きいため、職場環境のミスマッチによる悲劇を防ぐためにも、化学プラントで働くことを目指される方は内定受諾前に必ず職場見学をするようにしてください。
臭いが問題ないかはもちろん、職場がキレイに管理されているかどうかは非常に重要です。
職場が汚い=余裕がない=きつい、事故が多いという傾向は確実にあてはまりますからね。
地方や僻地へ勤務する覚悟は必要
田舎暮らしが嫌な人にはマイナスポイントでしかないんですが、化学工場は圧倒的に地方の僻地にあることが多いです。その大きな理由は以下の3つ。
- 公害規制の問題で都市部に大きなプラントが立てられない
- 海岸近くの方が原料の運搬に有利
- 消防法の問題で広大な敷地を必要とする
だから化学プラントに最適な立地は海沿いの埋め立て地なんですよね。工業地帯と呼ばれる地域は軒並み海のそばにありますしね。
どうしても都市部で働くことは譲れないという人には残念ながら条件が合いません…
逆に、長く働くなら地元を離れたくないという方もいるはず。そのような方の地元に化学プラントがあれば有力な選択肢になってくるので、ぜひチェックしてみましょう。
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化学メーカーの仕事は魅力の方が大きい
製造業はやめとけという意見に対して見解を述べた結果、
- やめとけに当てはまらない意見:6件
- どちらともいえない意見:6件
- やめとけに当てはまる意見:3件
となりました。中間意見に対してもポジティブな見解が多かったことを考えれば、世の中の製造業はやめとけという意見の大半は化学メーカーには当てはまらないということですね。
どんな仕事でもメリット・デメリットはありますが、総合しても化学メーカーでの仕事は魅力の方が大きいですよ。
化学メーカーが気になった方はぜひチェックしてみてください。