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給料が高く、残業や休日出勤の少ないいわゆるホワイトな業界と言われる化学業界へ転職したいと考えている人は多いはず。でも、どの会社がホワイト企業かは化学業界で働いていないとなかなかわかりません。
そこで本記事では、化学メーカーで働く私しんたにが様々な視点から優良企業と判定した会社を紹介します。
- 優良企業の判断基準
- ・優れた製品ラインナップ
・将来性のあるビジネス戦略
・技術力の強化体制
・安定した財務基盤
・従業員が安心して働ける環境
一部主観は入っていますが、優良企業=ホワイト企業の図式が成り立つことが多いです。
本記事は主に転職希望者に向けて書きましたが、就活生にも有用な内容になっています。ぜひ最後までご覧ください。
1.信越化学工業:日本最強の化学メーカー
はじめに取り上げるのは日本最強の化学メーカーの名を欲しいままにしている信越化学です。信越化学の凄さといえばなんといっても収益性の高さ。
- 2022年3月期の決算
- ・売上高 :20,744億円
・営業利益 :6,763億円
・営業利益率:32.6%
一般に製造業では営業利益率10%を超えると相当利益率がいいほうと言われますがか、いとも簡単に超えてくるあたりが最強たるゆえんです。
そんな信越化学の収益性を支える主力製品といえば塩化ビニル樹脂とシリコンウエハー。汎用品の塩ビで利益を上げられる徹底したコスト管理に加え、収益性の高いシリコンウエハーで世界シェア首位を獲れる技術力を備えています。
そのほかにも信越化学の優良企業ぶりは多方面から見られ、
- 製品ラインナップ:シリコーン関連技術を活かした機能材料群
- 売上規模:世界の化学メーカー売上ランキング20位(2022年)
- 堅牢な財務体制:自己資本比率は驚異の80%超え
など、あらゆる面において隙がありません。
あとは給料がもう少し高ければ働く側としては言うことがないのですが、さすがに高望みしすぎでしょうか。原資があれば配分も出来ますからね。
2.日産化学:信越と双璧をなす高利益率
信越化学に次ぐ高利益率を誇る化学メーカーの代表格である日産化学。大手より売り上げ規模は低いものの、充分桁違いの利益をたたき出しています。
- 2022年3月期の決算
- ・売上高 :2,079億円
・営業利益 :509億円
・営業利益率:24.5%
直近ではコロナ禍の影響もなんのその、営業利益・恵三利益・純利益の全てで過去最高益を達成し、中期経営計画もクリアとなかなかの化け物ぶりです。
そんな日産化学は化学品、機能性材料、農業化学品を手掛けており、IPS液晶用光配向膜や半導体用反射防止コーティングなど世界シェアが高い製品をいくつも抱えています。
さらに持ち前の研究開発力の高さと新しい領域へ挑戦する企業文化によって、成長産業へ次々と新製品を提供することで利益を生み出しています。
この好循環のおかげで市況変動の影響も受けにくく、今後も安定した成長が見込めそうです。
3.三菱ケミカル:日本最大の総合化学メーカー
日本最強の化学メーカーが信越化学なら、日本最大の化学メーカーは三菱ケミカルです。
2017年に三菱化学・三菱樹脂・三菱レイヨンの3社が合併して誕生しました。世界の化学メーカー売上ランキング50にランクインしています(第11位)。
総合化学メーカーは川上から川下まで多彩な製品を手掛けるものの、どこのメーカーも基礎化学品の低収益性に苦労している節が見られます。
ですが、三菱ケミカルは業界のなかでは相当大胆に構造改革を断行して選択と集中を進めようとしています。
高利益が見込める機能性材料やヘルスケア分野に集中する一方で、低利益の石化事業を分離して同業他社との統合を模索中。
さらに働き方改革が興味深く、従業員の働きやすさを高める施策「KAITEKI健康経営」に加えて、業界でいち早くジョブ型人事制度を導入しました。
- ジョブ型人事制度とは?
- 事前に定義した職務に対する成果で賃金水準や賞与を決める雇用制度のこと
年功序列の企業がほとんどの化学メーカーではかなり珍しいですね。実力を評価に反映してほしい層への訴求がすごいです。
4.旭化成:日本最高の化学メーカー
最強の信越、最大の三菱ケミカルときて、最高の化学メーカーは?と聞かれれば旭化成を推します。その理由はあらゆる面でのバランスの良さ。
- 自動車・医療・住宅など多様な市場の製品を持つ
- 製品の大半は川下を中心とした高利益のビジネス
- 海外売上高比率約50%かつ極端に依存する市場がない
- 化学メーカーの中でも圧倒的な知名度
- 風通しの良い企業文化
- 世界の化学メーカー売上ランキング50にランクイン(第38位)
化学業界でも評判がすこぶるよく、旭化成のネガティブな話はほとんど聞きません。取引先や従業員を大切にする風土がしっかり根付いているのでしょうね。
5.レゾナック:半導体特化を決めた巨大企業
レゾナックは2020年に日立化成を買収した昭和電工が2023年に統合してできた企業です。この買収劇は小が大を飲んだと業界内で相当話題になりました。
買収の負担はすさまじく、アルミやセラミック、鉛蓄電池などの事業売却に迫られましたが、それもひとえに半導体分野へ集中するためです。
- 売上の3割が半導体関係
- 半導体後工程分野では世界シェア首位
- 不稼働資産を売却して半導体分野へさらに投資
半導体材料メーカーとして確固たる地位を築く意思がすさまじく、後工程材料の世界シェア首位を取るなど既に一部成果が出てきています。
働く側からすれば、構造改革をしている会社は大元に乗れれば刺激的な仕事ができると相場が決まっています。つまり半導体関連の仕事ができれば一考の余地アリです。
6.東京応化工業:半導体フォトレジスト世界シェア首位
半導体材料は日本メーカーが高いシェアを維持できている数少ない分野ですが、なかでもフォトレジストは市場の約9割が日本製と、まさに日本メーカーの独壇場です。
そんなフォトレジストで堂々の首位を誇るのが東京応化工業。伸びる市場でシェアを獲れている企業が弱いはずがありません。
財務状況も底堅く、目下の業績も2021年に立てた中期経営計画をわずか一年でクリアするなど非常に調子がいいですね。
ほぼ半導体の一本足打法になっているのが気になりますが、フッ化水素の例でもあったように半導体材料はコピーが非常に難しく、かつ需要の急落が予想しにくい分野でもあるため将来の安定感も高いですね。
7.太陽ホールディングス:ソルダーレジスト世界シェア首位
半導体関連で強い企業は他にもまだまだあります。太陽ホールディングスはソルダーレジストのシェアが6割と圧倒的な強さを誇ります。
売上の7割は半導体ですが、他にも医薬品、メガソーラー、植物工場、その他ファインケミカルなど様々な分野を手掛けています。
主力事業で稼いだお金を次の成長事業に投資する良いサイクルができていますね。
8.日東電工:ニッチトップを狙う技術メーカー
液晶テレビなどの表示材に欠かせない偏光板フィルムで世界シェア首位なのが日東電工です。メイン事業の粘着テープから派生して様々な製品を手掛けています。
日東電工はニッチトップという、小規模ながら需要が伸びる分野で首位をとっていく戦略を取っています。見た目は大企業ですが、実態としては中小企業が集合して巨大になったという方が正しいですね。
最近の化学メーカーで主流の選択と集中とは真逆の戦略ですが、不況時のダメージは少なくなるためある意味安定感があるスタイルです。
日東電工で働きたいと思った時に注意する点が2つ。
- 技術力の高さに定評がありますが、素材開発ではなく他社から原料を調達して製品に加工する、いわゆるフォーミュレーターです。合成・反応をしたい人には不向きです。
- 社風が体育会系という話はよく聞きます。ハードワークをゴリゴリ進めるのが性に合うかは考えた方がいいですね。
ちなみに日東電工のガムテープは割高ですが、薄くて非常によくくっつきます。ホームセンターに行けば売ってるので、ぜひ買ってみて技術力の高さを体感してみてください。
9.日本ゼオン:材料開発に懸ける技術屋
日本ゼオンは基盤事業のエラストマーに加えて、シクロオレフィンポリマー(通称COP)などの高機能樹脂を稼ぎ頭にしている会社です。この会社はなんといっても研究開発の粘り強さが持ち味で、その代表格がカーボンナノチューブ(CNT)です。
CNTは軽量・高強度・高熱伝導率など優れた特長を多く持つことから夢の材料と言われてきたものの、合成収率が低い課題がありました。しかし日本ゼオンは課題を克服して量産化を成功させ、2018年に実用化へこぎつけました。1991年のCNT発見から27年かかっています。
黒字化のの目途が立たない状態で研究開発に投資し続けられる企業はほんの一握りなことを考えると、CNTの事例は日本ゼオンという会社を良く表しています。
コモディティと高機能品の両方を伸ばす方針で利益バランスも良く財務も安定しているため、安心して働ける会社といえそうです。
10.日油:幅広い事業を手掛ける高機能メーカー
「宇宙からバイオまで」のキャッチフレーズ通り、幅広い事業を展開しているメーカーです。その多角化経営にもかかわらず営業利益率が20%に迫る勢いで、かなりの高収益体制です。
なかでも最近好調なのがDDS(ドラッグデリバリーシステム)事業ですね。コア事業である油化事業との親和性が高く、需要は右肩上がりのため今後の柱として期待されています。
また、化薬など明らかに参入障壁が高い製品も手掛けているあたり、他社品との差別化がうまい企業であることが伺えます。
会社の体質は年功序列で良くも悪くも日本企業、安定を求めるならピカイチの会社でしょう。
11.クレハ:ラップだけじゃない高機能メーカー
クレハといえばクレラップが有名ですが、エンプラ・医薬品・農薬なども手掛ける高機能化学メーカーです。そう、クレラップだけじゃないんです。
クレハは「どこにも無ければ、創ればいい」を開発精神に掲げており、自社開発を強みとする研究開発型企業として様々な機能製品を手掛けています。
近年で最も注目されている材料はポリフッ化ビニリデン(PVDF)です。PVDFは今後市場が伸長すると予測されるリチウムイオン電池のバインダーとして利用され、世界シェア4割を誇ります。
財務基盤も健全なうえに徹底してものづくりにこだわるその姿勢から、研究開発をやりたい人には良い企業ですね。
12.積水化学工業:化学メーカー屈指の高待遇
化学系で積水といえば積水化学です。積水ハウスが有名ですが、今は資本関係から外れており独立しています。
積水化学の主力は高機能プラスチックで、導電性微粒子、液晶用シール材、自動車用合わせガラス中間膜、架橋発泡ポリオレフィンなど世界シェア首位の製品を複数保有しています。
その他、住宅・インフラなど需要が絶対になくならない分野や、今後伸長が期待できる医療分野など、安定と成長を見越した事業構成で今後も将来性が見込めます。
また、積水化学を語る上で外せないのが給料の高さ。ホールディングス部門のみを除いた化学メーカー平均年収ランキングで必ずトップ3に入っています。
そのぶん拘束時間が長いとか激務とかいう噂はありますが、見返りは充分でしょう。高給は正義です。
13.花王:知名度No.1の化学メーカー
化学メーカーでは極めて珍しい、一般消費財向けの製品が大半を占める会社です。そのおかげで一般知名度は抜群です。
シャンプーや洗剤などの製造会社というイメージが強いですが、化学メーカーとしての本質は天然油脂・界面活性剤・親水性ポリマーの設計開発技術です。事業の一部にBtoB向け化成品もありますからね。
健全な財務以上に強いのがブランド力の高さ。複雑な背景を理由にたびたび不買運動が起こりますが、業績への影響は限定的だったりします。
働きやすい会社という風評が良く聞こえてくる一方で、就職倍率が異様に高いことでも有名です。就活生のエントリー数が25,000人ともいわれています。なかなかの狭き門…。
14.日本ペイントホールディングス:塗料業界アジアNo.1
底硬い需要があり、実は成長産業の塗料業界はM&Aが活発に行われていますが、なかでも日本ペイントはウットラムと協力することでアジア1位、世界4位の地位まで大きくなりました。もちろん国内シェアは1位です。
塗料は樹脂や顔料などの配合物でブラックボックス化がしやすく、
- 地産地消型ビジネス:国や地域でニーズが異なるため
- 高い参入障壁:世界上位8社の市場占有率50%
- 周辺産業との親和性:接着剤や建設化学品などとのシナジーが期待できる
といった特殊な構図もあり、規模を追いかけるビジネスが非常に有効です。一見派手なM&Aを行っていますが、ウットラム社の後ろ盾の影響か財務はかなり安定しています。
ちなみに国内の塗料メーカーは各社とがった強みを持っているのも面白いところ。なお、日本ペイントは総合型です。
- 各塗料メーカーの強み
- 関西ペイント:自動車塗料、工業塗料、建築塗料
エスケー化研:住宅用塗料
中国塗料:船舶塗料
大日本塗料:建材塗料、構造物塗料
塗料業界は末端に近い製品を扱うため、カスタマイズ色が強くバタバタした働き方を求められます。
15.DIC:インキの世界シェア首位
塗料と似ているようで違うインキで世界シェア首位なのがDICです。ペーパーレス化の影響で国内需要は落ち込む一方ですが、世界需要はまだ伸びています。
DICはインキ以外にも合成樹脂・液晶・機能性食品など様々なビジネスを展開しています。実質総合化学メーカーですね。
ビジネスモデルの傾向は業界2位の東洋インキ、業界3位のサカタインクスも同じです。ここも塗料と違うところ。
売上や営業利益はそれなりに出ているものの、財務面では2022年にBASFの顔料部門を買収した影響からか、財務面で若干弱いのが気になることろ。
ただし社内の風通しがよく給料がいいという話をよく聞くため、働き手にとってはいい会社の可能性が高いですね。
16.ADEKA:バランスの取れた中間素材メーカー
ADEKAは最近急にCMを打ち始めた素材メーカーですが、その事業は実に堅実です。
樹脂添加剤・電子材料・機能科学・ライフサイエンス・食品の事業いずれも以下の特徴を持っています。
- 世界シェア1位・上位の製品を持っている
- 全ての事業が年々成長している
- 利益を特定の事業に依存していない
選択と集中が多い化学メーカーの中では相当にバランスがいいですね。
待遇も大手と比べれば給料は見劣りするものの、手厚い福利厚生や良好なワークライフバランスなどを踏まえると相当働きやすい会社です。
17.日本触媒:高吸水性樹脂の世界シェア首位
日本触媒はアクリル酸を核にした機能性化学品を製品群に持つ化学メーカーです。紙おむつなどに使用される高吸水性樹脂(SAP)で世界シェア首位を取っています。
技術力に定評のある会社で、アクリル酸からの一貫生産を強みにした高品質・安定供給を売りにしています。2012年に起こしてしまった爆発事故でその神話が危ぶまれましたが、ものの見事に復活してきたあたり底力は建材のようです。
一方でSAPは市況変動の影響を受けやすいため、基盤事業の改革と次の柱を育てる必要に迫られています。最終合意は取られませんでしたが、三洋化成工業との経営統合が出ていたことも記憶に新しいですね。
次の柱としてEVに使われるリチウムイオン電池用電解質が育ってきており、今後の躍進に期待です。
18.三洋化成工業:樹脂業界のなんでも屋
かつて日本触媒と経営統合の話が出ていた三洋化成を一言であらわすと樹脂を中心にした素材屋です。製品の用途を絞る方が難しいレベルでなんでも屋です。
特徴として、日本触媒が川上から事業展開しているのに対して、三洋化成は末端からのニーズをくみ取ったカスタマイズを得意としています。
その柔軟さから、日本触媒より市況変動を受けにくいビジネスモデルを構築しているのが魅力。財務も健全です。
三洋化成といえば独特な待遇が有名で、入社時の給料は高いものの伸びが遅い、管理職になれば一気に跳ね上がる賃金体系です。体育会系の気質も強く、バリバリやれる人に向いています。
19.東亞合成:アロンアルファを生み出したアクリルメーカー
東亞合成は日本触媒と同じくアクリル酸を主軸にした製品展開をしたメーカーですが、基礎化学品から高機能製品まで幅広く手掛けており景気変動の影響を受けにくい事業展開が強みです。
アロンアルファのような一般知名度のある製品を持っている化学メーカーはあまり見ませんね。
高収益体制を築けており安定感はあるものの、海外売上比率が約2割程度と国内需要に依存しているのが弱いところ。こちらも海外シフトを強める化学メーカーでは珍しいです。国内志向の人向きですね。
化学系の優良企業に入るカギはエージェントを活用した転職
ここまで化学メーカーの優良企業を19社紹介してきました。他にも紹介しきれていない優良企業もたくさんありますからまた追記したいと思います。
これらの優良企業で働きたいと思ったら、転職エージェントを利用するのが一番の近道です。各企業との太いパイプを持ち、業界に精通しているエージェントたちがマッチングしてくれます。
化学業界への転職にオススメの転職エージェントをまとめているので、ぜひ参考にしてください。