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化学メーカーの技術職を選ぶ大きな理由は、研究を仕事にしたいという想いがあるからですよね。
そして研究をするなら大手企業と中小企業のどちらがいいのかはよく議論になります。
大手企業と中小企業の両方で働いたことがある私の経験から言うと、研究がしたいなら大手企業で働く方が圧倒的におすすめです。
その理由は、大手企業の方が研究できる環境が整っているからです。具体的には、
- 研究に使える時間
- 研究に必要な情報
- 研究に使えるお金
の全てが恵まれています。
この記事では研究という観点から大手企業と中小企業を詳しく比較していきます。
転職活動で大手企業と中小企業のどちらを中心に調べるかを迷っている方はぜひ読んでみてください。
研究に使える時間は大手企業の方が上
大手企業は雑務が多いから本務の研究に使える時間が少なくなる、とよく言われます。
大手企業特有の雑務としてよく挙げられるのが以下の3つです。
- 承認ルートが多い
- 謎ルールがある
- たらい回しが発生する
確かに大手企業は余計な仕事は発生しますが、だからといって中小企業の方が研究に時間を使えるとは限らないのですよ…
雑務を考慮しても大手企業の方が研究に時間を多く使える理由は、業務の分化にあります。
大手だと担当技術以外の業務は基本的にやりません。
当たり前のことを言っているように見えますが、中小企業は他部署の仕事を兼務することが頻繁にあります。
技術という仕事の区分があいまいなせいで、
- 営業の代わりに自社製品をプレゼンして交渉してくる
- 製造現場の欠員に対してフォロー要員として入る
- 製品トラブルの原因を逐一調査する
のように、なかなか笑えないことが起きたりします。
中小企業は各部署ギリギリの人数で回していることが多いため、トラブルが続くと途端に仕事が回らなくなります。
そのため、一通りの業務に理解があって、直近仕事を止めても支障がないポジションの技術にしわ寄せが来るんですね。
こうなったら研究開発の業務が進まないのは当たり前です。
今はよくても、将来の飯の種は確実に削られるのですが…
入手できる情報量が全然違う
技術者としてのレベルを高めるためには
- 専門分野の技術トレンド
- 幅広い周辺技術
- 技術ディスカッションの場
に触れ続けることが大事です。
ですが、大手と中小では普通に働いているだけでも技術情報の格差が発生します。
社内の情報量が桁違い
社内の情報量は扱うテーマ数×技術員の数で測れますが、大手企業の方が桁違いに多いです。
中小企業は従業員数と社内の情報量の両方が少ないです
私が過去に働いていた中小企業時代の技術員数は、管理職を入れて7人でした。
各人の担当は顧客や細かい用途の差はありますが、基本的に全員同じ製品群を担当します。
必然的に似たような技術の話になるんですよね。
ところが、今勤めている大手企業は技術員が4桁以上います。
様々なバックボーンのある人と議論しているうちに自然と技術者の感性が磨かれていきます。
技術員の数自体は所属する部署による格差はありますが、大手企業は技術員なら大部分の技術情報にアクセス可能です。
そのため、普通に仕事しているだけで得られる情報量に差がついていきます。
社外に情報を取りに行く文化の問題
大手は外部の情報を取りに行く文化が醸成されています。
- 社外セミナーを聞きにいける
- 書籍や電子ジャーナルが豊富
- 外部から講師を呼んで講演してもらえる
中小では特に、技術的見地を広げるという理由だけではなかなかセミナーにいかせてもらえません。
金がかかる上に時間を割いてまで行く?ならそのぶん仕事すれば、という話になるんですよね。
一方で、大企業では人材育成の意識が強いため、年〇回はセミナーに行って来いと言われたりします。
常日頃から最新の技術を取り込むことで質の高い研究が出来ることをわかっているからこその文化ですね。
研究に使えるお金も段違い
研究というものはとにかくお金がかかります。
研究用の設備、材料、人員・・・言い出したらキリがないです。
当然お金を使える方が開発の質も効率も高くなりますが、ここでも格差が出ます。
研究用設備や機器は露骨に差が出る
研究に必要な機器は安くても十数万、高ければ数千万もするものがザラにあります。
中小企業だと高価な機器にはとてもではないが手が出せないため、購入できる機器は必要なものに限られます。
むしろ就職したての頃は分析機器を借りに大学へお邪魔していましたらね…
その点、大手企業なら有効性と費用対効果さえクリアできれば買えます。
特に画像解析系の機器はアップデートが激しく、最新版だと解像度や測定スピードが雲泥の差なんですよね。
初めてキーエンスの最新顕微鏡を使った時は感動レベルでした。
さすが営業利益率50%越えの会社の製品は伊達じゃないと思った瞬間です。
業務委託という発想の有無
大手企業ならではの考え方として、業務委託があります。
大企業はコスト意識の考え方に開発効率が入っているため、
- 研究補助として人が雇える
- 外部の大学などに研究委託もできる
- 分析の委託だってできる
のような選択肢が使えます。
特に大学への研究委託は、マッチングさえよければ企業側としてはコストパフォーマンスが高い基礎研究の手段になります。
なかなか中小企業では実践ができないですが…
お金があるから新しいことにチャレンジできる
お金があるからこそ新しい研究にチャレンジができる面があります。
大手企業はいわゆる会社体力が高いため、新規事業の失敗をある程度許容できます。
そもそも研究はやれば必ずうまくいくものではないですからね。
そしてうまくいったところで新しい設備が必要になることもあります。
その時に投資ができるのか?という観点からも、やはりアイデアだけでは研究に限界が来ます。
中小企業だとできるチャレンジの回数も、内容も狭まってきます。
中小企業が希望に合うケースもある
ここまで研究したいなら大手企業をオススメする理由を説明してきました。
一方で、人によっては中小企業の方が希望に合うケースもあります。それは、
- 極力研究以外したくない場合
- 希望する会社でしかできない研究があるとき
の2つです。
大手企業の異動は研究継続にとってリスク
大手企業で働いていくうえで避けて通れないのが異動です。
大手企業はほぼ複数の事業所があり、人によっては一定の間隔で転勤させられることもあります。
対策として転勤がない働き方を選ぶことが出来る企業もありますが、工場内の配置転換で職種自体が変わる可能性もあるため完全な対策とはいえません。
そのため、大手企業での研究では2つのリスクがあります。
- 技術職以外に配属になり研究自体ができなくなる
- 異動によって好きな製品の開発から離れることになる
実際に、好きな研究をしたいという理由で大手企業から中小企業に転職する人は少なからずいます。
その人は年収や待遇などが下がっても、本当にやりたいことには代えられないと言っていました。深いですね…
希望する会社でしかできないことがあるとき
化学業界では、特定の会社でしか作れない製品が結構あります。
特定の用途では中小企業が業界一位なんてこともざらです。
独自の強みを持った会社で研究をしたい場合も選択肢としてはありです。
希望条件をしっかり考えて会社を探そう
より良い研究環境で働きたいなら、今より大手の企業で働くことが一番の近道です。
一方で、何の研究をしたいのかという観点で考えた場合は中小企業も選択肢に入ってきます。
どちらがいいかについては自分の希望によって変わります。
もちろん自分自身で希望を整理するのが原則ですが、どうしても絞り切れない場合はプロの力を借りましょう。
業界と専門性の両方を熟知したアドバイザーに聞けば、自分一人では描けなかった未来が見えますよ。